正当な理由なく解任された取締役の会社に対する損害賠償請求

 正当な理由なく解任された取締役は、会社に対して損害の賠償を請求することができます(会社法第339条2項)。
 損害賠償請求に関して、実務上問題となるのは、(1)解任に正当な理由があるかどうかと、(2)賠償責任が認められるべき損害の範囲、の2点です。以下、順番にご説明します。
(1)解任に正当な理由があるかどうか
 解任に正当な理由がある場合、会社の損害賠償責任は否定されることになります。実際に主張されることの多い解任理由は以下のとおりです。

① 病状により職務執行ができない場合
 心身の故障のため職務執行に支障がある場合には、正当理由が認められます。

② 法令・定款違反があった場合
 具体的には、背任、横領、競業避止義務違反、利益相反取引、善管注意義務違反や、会社の業務に関連する法令への違反が主張されることがあります。

③ 経営判断の失敗・経営能力の著しい欠如
 重大な過誤により会社に損失を与えたり、取締役に任せていた事業から会社が撤退を余儀なくされた場合など、経営能力が著しく欠如していると認められる場合に、正当な理由があると判断されることがあります。

④ 主観的な事情
 大株主の好みや、より適任な者がいるという主観的な事情が主張されることがありますが、これらによって正当理由が認められることはありません。

 正当理由の判断にあたっては、職務を執行する上で支障となる客観的かつ合理的な事情があるか否かが問題となります。支配権紛争・権力闘争の結果、多数派株主によって解任されてしまったという場合や、代表者と折り合いが悪く解任されてしまったという場合、解任された取締役には職務を執行する上で支障となる客観的かつ合理的な事情はありませんので、その解任には正当な理由がないということになります。
(2)賠償責任が認められるべき損害の範囲
 次に、正当な理由なく解任されてしまった取締役が、会社に対して賠償請求できる損害は以下のとおりです。

① 任期満了までに支払われたはずの役員報酬
 任期満了までに支払われたはずの役員報酬に相当する額を請求することができます。

② 退職慰労金
 退職慰労金支給規定が存在したり、過去に退職慰労金が支給されている場合には、退職慰労金相当額も併せて請求できることがあります。

③ 賞与
 毎年一定の形で賞与が支給されている場合、賞与相当額も請求できることがあります。

④ 慰謝料・弁護士費用
 慰謝料・弁護士費用は、極めて例外的な場合を除き、損害賠償には含まれません。


 正当理由や損害の範囲に関しては、個別具体的な事情が決め手となりますので、事実関係の証拠をできるだけ集めておいていただくことが何よりも重要です。

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