改正会社法のポイント

  • 1、監査役会設置会社における社外取締役選任の義務化が見送られました。
  • 2、公開会社・大会社・監査役会設置会社であり、株式に関する有価証券報告書の提出が義務付けられている会社に対して、定時株主総会において、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明する義務が課されました(改正会社法327条の2)。また、事業報告の内容にも含めなければなりません。
  • 3、社外取締役の資格要件が以下のとおり改正されました(改正会社法2条15号)。
    • (1)株式会社またはその子会社の業務執行取締役・執行役・支配人その他の使用人(以下「業務執行取締役等」といいます。)でないこと。
    • (2)就任前10年間、株式会社または子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。
    • (3)就任前10年間のいずれかの時に、株式会社または子会社の取締役、会計参与、監査役であったことがある者については、取締役、会計参与、監査役への就任前10年間、株式会社または子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。
    • (4)株式会社の親会社等または親会社等の取締役、執行役、支配人その他の使用人でないこと。
    • (5)兄弟会社の業務執行取締役等でないこと。
    • (6)親会社等、取締役、執行役、支配人その他の重要な使用人の配偶者・2親等内の親族でないこと。
  • 4、社外監査役の資格要件が以下のとおり改正されました(改正会社法2条16号)。
    • (1)就任前10年間、株式会社または子会社の取締役、会計参与、執行役、支配人その他の使用人であったことがないこと。
    • (2)就任前10年間のいずれかの時に、株式会社または子会社の監査役であったことがある者については、監査役への就任前10年間、株式会社または子会社の取締役、会計参与、執行役、支配人その他の使用人であったことがないこと。
    • (3)株式会社の親会社等または親会社等の取締役、監査役、執行役、支配人その他の使用人でないこと。
    • (4)兄弟会社の業務執行取締役等でないこと。
    • (5)親会社等、取締役、支配人その他の重要な使用人の配偶者・2親等内の親族でないこと。
  • 5、責任限定契約を締結できる対象者 の範囲が拡大され、①業務執行取締役等でない取締役と②社外監査役でない監査役も、責任限定契約を締結できることにな りました(改正会社法427条)。
  • 6、内部統制システムについて、①監査を支える体制・監査役による使用人からの情報収集に関する体制の充実・具体化、②運用状況の概要が、事業報告の内容とされることになりました。
  • 7、監査等委員会設置会社が創設されました(改正会社法2条11号の2、38条2項以下、326条2項、327条1項3号、399条の2以下他)。
  • 8、監査役設置会社における会計監査人の選解任に関する議案の内容の決定権が、監査役会に与えられることになりました(改正会社法399条)。
  • 9、公開会社において支配株主の異動を伴う株式の発行を行う場合に、既存株主に対する事前の通知・公告等が義務付けられ、10%の議決権を有する既存株主が反対する旨の意向を表明した場合には、募集株式の発行のために株主総会決議(普通決議)が必要となりました(改正会社法206条の2)。ただし、財産の状況が著しく悪化している場合で、事業の継続のため緊急の必要があるときは株主総会決議は不要とされました。
  • 10、公開会社において支配株主の異動を伴う新株予約権の発行を行う場合についても、上記9と同様の規制が導入されました(改正会社法244条の2)。
  • 11、株式の発行、新株予約権の発行、設立時の出資の履行に関して、仮装払込みがされた場合の、引受人・関与した取締役の民事責任が定められました(改正会社法213条の2他)
  • 12、ライツイシューに関して、新株予約権無償割当てにおける割当通知は、割当ての効力発生日後遅滞なく行えば足りるものとされ、割当通知日から権利行使期間の末日までが2週間未満となった場合には、割当通知日から2週間を経過する日まで延長されたものとみなされることになりました。これによりライツイシューによる資金調達のスピードが速くなりました(改正会社法279条)。
  • 13、多重代表訴訟制度が創設されました。親会社の株主が完全子会社の取締役を訴えることが可能になりました(改正会社法847条の3)。
  • 14、親会社が、総資産額の20%を超える帳簿価格の子会社株式を譲渡する場合に、株主総会における特別決議が必要となりました(改正会社法467条1項2号の2)。
  • 15、親会社との間で利益相反取引を行った場合、事業報告において、①会社の利益を害さないように留意した事項、②利益相反取引が会社の利益を害さないかどうかについての取締役(会)の判断とその理由等を記載しなければならないことになりました。なお、監査役(会)は、上記2点に関する意見を監査報告の内容としなければならないことになりました。
  • 16、特別支配株主(90%以上の議決権を保有する株主等)が、他の株主・新株予約権者全員に対して、株式・新株予約権を自己に売り渡すよう請求できる制度(キャッシュアウト制度)が創設されました(改正会社法179条以下)。
  • 17、株主による組織再編の差止請求権が創設されました(改正会社法784条の2、796条の2、805条の2)。
  • 18、詐害的な会社分割、事業譲渡が行われた場合、残存債権者が、新設会社・承継会社、譲受会社に対して、債務の履行請求ができることになりました(改正会社法759条4項から7項他)。
  • 19、株主名簿の閲覧請求にかかる拒絶事由のうち、「請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき」(現行会社法125条3項3号)が廃止されました。
  • 20、募集株式が譲渡制限株式である場合は、総数引受契約の締結について株主総会における特別決議が必要となりました(改正会社法205条2項)。
  • 21、監査役設置会社において、監査役の監査の範囲を会計に限定する旨の定款の定めがある株式会社は、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社」である旨を登記することになりました(改正会社法911条3項17号)。

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