株主総会の招集請求・開催要求について

(1)原則と例外
 原則として、取締役会設置会社においては、取締役会が株主総会の招集を決定し、代表取締役が業務執行として招集を行い、非取締役会設置会社においては、取締役(二人以上の場合は過半数で決定する)が株主総会の招集を決定し、取締役が招集を行います。
 しかし、役員の選解任、剰余金の配当など、株主総会に決定権限のある事項(及びその他の重要事項)について、取締役が株主総会を招集しようとしない場合には、例外として、一定の株主も裁判所の許可を得て自ら株主総会を招集することができます。
(2)持株要件
 「一定の株主」とは、公開会社の場合には、総株主の議決権の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にはその割合)以上の議決権を、6ヶ月(これを下回る期間を定款で定めた場合にはその期間)前から引続き保有する株主のことをいいます。非公開会社の場合には、保有期間の要件がありません。特例有限会社の場合は、原則として総株主の議決権の10分の1を保有する株主となりますが、定款でこの要件を加重することもでき、請求権自体を排除することもできます(整備法14条1項)。
 なお、1名の株主で持株数(議決権数)の要件を満たす必要はなく、複数の株主の合計保有株式で要件を満たす場合には、当該株主全員の連名で株主総会の招集請求ができます。
 また、持株数の要件は、招集した株主総会の終結時まで持続する必要があります。申立ての審理中に要件を満たさなくなると、申立適格を欠くことになります。例えば、新株発行により要件を満たさなくなった場合でも、会社が申立てを妨害する目的で新株を発行した等の特段の事情のない限り、申立適格を欠くことになります。また、裁判所の許可決定から株主総会の終結時までの間に要件を満たさなくなった場合、当該株主総会は招集権限がない者によって招集された株主総会であり、決議は不存在と考えられることになります。
(3)招集請求
 上記の持株要件を満たす一定の株主は、代表取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限られます。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができます。代表取締役に対して送付する株主総会招集請求書(内容証明郵便)に記載する株主総会の目的である事項と、後述する裁判所に対する許可申立ての際に申立の趣旨に記載する株主総会の目的である事項は一致する必要があります。会社が上場会社の場合、招集請求を行うために個別株主通知が必要となります(社債、株式等の振替に関する法律154条)。
(4)招集許可の申立て
 株主総会の招集請求をした株主は、①招集請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合、又は②招集請求があった日から8週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にはその期間)以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合には、会社の本店所在地の地方裁判所に対し、申立手数料1000円を支払って、株主総会の招集許可の申立てをすることができます。なお、会社が上場会社の場合には、個別株主通知を行った後、4週間以内に許可申立てを行う必要があります(社債、株式等の振替に関する法律154条、施行令40条)。
 株主総会招集許可申立書の添付書類は、以下のとおりです。
  • ① 会社の登記事項証明書
  • ② 会社の定款
  • ③ 持株要件の疎明資料
     ※例えば、株主名簿、株主名簿記載事項証明書(会社法122条)、株券、個別株主通知を行った際に口座管理機関(証券会社)から受け取った受付票等が考えられます。
  • ④ 株主総会招集請求書(内容証明郵便)及び郵便物配達証明書
  • ⑤ 取締役が株主総会の招集を怠っていることの疎明資料
     ※例えば、会社の役員や他の株主の陳述書等が考えられます。私の経験では、招集請求をした株主本人の陳述書でも問題はありませんでした。
(5)審理
 裁判所は、会社の代表取締役等を呼び出し、会社側の意見を聴取する機会を設けます。
 裁判所から会社に対して株主総会の開催を勧告した結果、会社が任意に株主総会を開催し、それを受けて株主側が申し立てを取下げるというケースが多いですが、状況次第で、裁判所に招集許可の決定を即日で出して頂くことも不可能ではありません。争点となるのは、通常、①持株数の要件又は②申立権濫用のどちらかです。濫用が認められるのは、株主総会を招集することに実益がなく、かえって有害であり、申立人に害意があるという場合に限られています。 許可申立て後に会社が株主総会を招集した場合、会社が招集した株主総会の日が、招集請求から8週間以内であれば、裁判所は許可申立てを却下することになります。会社が招集した株主総会と裁判所の許可決定により少数株主が招集した株主総会が競合した場合には、同一事項につき会社が株主総会を開催する権限は失われると解されており、会社が招集した株主総会は無権限者による招集となり、その決議は不存在と考えられることになります。
(6)決定
 許可決定に対して不服申し立てをすることはできません(会社法878条4号)。
 許可決定には6週間程度の招集期限が定められることが通常です。却下決定に対しては、申立人のみが通常抗告をすることができます。
(7)株主による招集手続
 少数株主は、自らの名義で株主総会を招集できます。なお、少数株主は、株主名簿以外にも、招集すべき株主を確知するために必要な会社の書類であれば、株主総会の招集権に基づき閲覧・謄写することができます。また、株主が1000人以上の会社では、少数株主が株主総会を招集する場合でも、招集通知に際し、株主に対して株主総会参考書類及び議決権行使書面を交付しなければならないことに注意が必要です(会社法298条2項、301条)。
(8)総会
 少数株主が招集した株主総会においては、定款の記載に関係なく、総会の場でまず仮議長を立て、議長を選任することになります。
決議できるのは裁判所で許可された議題の範囲内に限られます。

ページの上部へ