ジョイント・ベンチャー

(1)合弁事業に関する様々な取り決め
 合弁事業(ジョイント・ベンチャー)の検討にあたっては、合弁事業の経営・運営のルールから、合弁事業を終了する際のルールまで、当事者間で様々なルールの導入が検討されます。
 例えば、取締役の員数を合弁事業の当事者間で分配したり(5名中3名を甲社、2名を乙社が指名できるとするなど)、一定の重要事項の決定について少数派株主の要承諾事項としたり、一方の当事者が株式を譲渡する場合には他の当事者が優先的に当該株式を買い取れることとしたりするなど(先買権の設定)、当事者の持株比率、合弁事業の内容、各当事者の合弁事業に対する役割・貢献がどのようなものかなどを考慮して、会社法のルールと異なるルールや会社法にルールのない事項について合意することが多くなっています。
(2)取り決めの実効性
 各種のルールを合意する際、そのルールの実効性を担保しておくことも重要です。合弁会社を株式会社とする場合、当事者は通常株主となるため、取締役の選任や一定の重要事項の決定方法に関する合意は、株主間における議決権行使に関する合意(議決権拘束契約(voting agreement))となります。
 議決権拘束契約は、合意の目的・内容が法の趣旨又は公序良俗に反しない限り、当事者間の債権的合意として有効となりますが、実際には、損害の発生及び損害額の立証が必ずしも容易ではないため、「合意に違反した場合に債務不履行に基づく損害賠償請求があり得ること」は担保として機能しないことがあり得ます。
 そして、現実に、合意に違反して議決権行使が為されてしまった場合、当該議決権行使が無効となるか否かは、ケースバイケースとなります。ポイントは、議決権拘束契約の当事者以外に株主が存在するかどうか、合意内容が明確かどうかです。
(ア)議決権拘束契約の当事者以外に株主が存在しない場合
 この場合、合意に反した議決権行使は定款違反と同視され、決議取消事由となります(会社法831条1項2号)。 また、合意に従った議決権行使をしない当事者がいる場合、合意内容が明確であれば、他の契約当事者が意思表示に代わる判決(民法414条2項但書及び民事執行法174条)を求めることも可能です。
 さらに、合意に反した議決権行使をしようとする当事者がいる場合、合意内容が明確であれば、差止請求が認められる可能性もあります。
(イ)議決権拘束契約の当事者以外に株主が存在する場合
 この場合、議決権拘束契約に違反して議決権が行使されても、当該議決権行使は無効にはなりません。
 結局、取り決めの実効性を担保するためには、①合意内容を明確にし、②常に全株主が議決権拘束契約の当事者になっている状態を保つことが重要ということになります。また、定款に規定することができる事項については、定款に規定することでより実効性を高めることができます。その他、継続的供給契約、技術提供契約、ノウハウのライセンス契約等、株主と合弁会社の間で締結する契約書の中で工夫することもあります。

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