- 1、取締役会決議でできること
- 取締役会は、定款に定めのある場合を除き、①代理人の資格及び代理権の証明方法、②代理人の数並びに③代理人による議決権の行使に関する事項について定めることができます(会社法施行規則63条5号)。①の代理権の証明方法には、委任状作成者の本人確認方法や委任状の様式が含まれます。また、会社は、株主総会に出席することができる代理人の数を制限することができます(会社法298条1項5号及び会社法310条5項)。
- 2、議決権行使書面と委任状
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(1)議決権行使書面のメリット
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議決権行使書面には株主の押印は不要です。また、会社は、定款に定めのある場合を除き、賛否の記載がなされないまま返送された議決権行使書面の取り扱い(賛成、反対又は棄権のいずれか)を取締役会にて決定することができます(会社法298条1項5号及び301条1項並びに会社法施行規則63条3号ニ及び66条1項2号)。つまり、会社は、議決権行使書面に賛否の記載がない場合には会社提案に賛成するものとして処理することを予め決めておくことができます。したがって、会社は、株主から単に議決権行使書面を返送してもらえば良いということになります。
- (2)議決権行使書面のデメリット
- 株主Aが会社に対して議決権行使書面を返送し、かつ、提案株主Bに委任状を交付した場合(議決権行使書面と委任状の重複)、株主Aは、提案株主Bを通じて株主総会に出席したことになります。議決権行使書面は、株主が総会に出席した場合には無効となるため(会社法298条1項3号)、委任状が優先することになります。
また、議決権行使書面では、総会の議事進行に関する手続的動議(例えば議長不信任)に関する議決権行使の権限は与えられません。この点は、その旨記載しておけば手続的動議への対応についても権限が与えられる委任状の場合と比べた場合のデメリットとなります。
- 3、総会検査役選任申立て
- 総株主の議決権の1%以上の議決権を有する株主は、株主総会に係る招集の手続及び決議の方法を調査させるため、株主総会に先立ち、裁判所に対して、検査役の選任を申し立てることができます。総会検査役は、招集手続及び決議方法を調査し、報告書を作成します。この報告書は、後日、決議取消訴訟が提起された場合に、極めて重要な証拠となります。
- 4、委任状の撤回の勧誘
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相手方に委任状を交付した株主に対し、委任状を撤回するよう働きかけることは可能です。委任状は、株主の意思により、いつでも撤回することができます。
- 5、従業員による意向表明
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従業員による意向表明は一般の株主に対して大きな説得力を持ちます。従業員の協力を得ることが可能な場合には、協力を求めることは有益な手段となります。
- 6、リハーサルその他
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委任状争奪戦が行われる株主総会は荒れます。これを想定して、リハーサルを行うことが必要です。シナリオに基づく議事進行、動議対応、議案の審議、質問対応、採決の順序、議場での投票、開票など、事前に準備しておくべき事項があります。
また、会社や株主構成の個性に応じて、様々な打ち手が存在します。
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