監査役の任期と定年内規の優先関係

監査役について、以下のような内容で定年制度を定めている内規が存在することがあります。

  • 役員の在任の年齢上限は、次のとおりとする。
    • 代表取締役 65歳
    • 取締役   60歳
    • 監査役   60歳

このような内規が存在する場合、任期の途中で60歳を迎えた監査役は、任期の途中であっても退任しなければならないのでしょうか。

監査役の役割は、取締役の職務執行を監査することにあります。適正な監査を行うためには、監査役の独立性が確保されていなければなりません。そのため、会社法では、①監査役の任期を原則4年とし、定款や株主総会決議による短縮を禁止したり(会社法336条1項)、②解任する場合には株主総会の特別決議を必要としたりして(会社法309条2項7号)、監査役の身分を保障しています。このような会社法の趣旨からすれば、監査役の任期に関する会社法の規定は、定年について定めている内規に優先して適用されると考えられます。

上記の内規を例にすると、「監査役 60歳」という規定は、選任の時点で60歳を超えていないことを定めたものにすぎないということになります。つまり、選任された時点で60歳未満であれば内規の規定は満たしており、任期の途中で60歳を迎えたとしても、任期満了を迎える日まで、そのまま監査役を務めることができます。

監査役が、任期の途中で内規に定められた定年を迎えた場合、会社から、定年を理由とした辞任届の提出を求められることがあるかもしれませんが、応じる義務があるわけではありません。また、定年のみを理由として解任された場合は、「正当な理由」(339条2項)のない解任として、任期満了までの報酬相当額等について損害賠償請求することができます。

執筆弁護士 田中諒子

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