会社の解散・清算(通常清算)

1 会社の解散・清算(通常清算)

新型コロナウイルスの影響で先行きが不透明である、後継者が見つからないなどの事情により、債務超過(会社の財産がその債務を完済するのに足りない状態)に陥っていないにも関わらず、やむを得ず会社の廃業を選択する場合があります。そのような場合には、会社の倒産の手続ではなく、会社の解散・清算(通常清算)の手続をとることになります。

2 スケジュール

会社を解散・清算(通常清算)する場合の大まかなスケジュールは、以下のとおりです。会社の営業を終了し(解散)、会社に残っている財産の処分などを行って(清算)、ようやく会社を廃業することができます(清算結了)。解散から清算結了までの期間は、最短でも2ヶ月以上が必要となり、清算対象が多い会社では1年以上かかる場合もあります。

法定期間・期限 手続 条文
(法律の名称の記載がないときは会社法)
主な必要書類
  株主総会の開催(解散決議、取締役とは別の者を清算人とする場合には清算人選任決議) 471条3号
478条1項3号
株主総会議事録
株主総会の開催から2週間以内 会社解散、清算人就任の登記 926条
928条1項
登記申請書
印鑑届出書
株主総会の開催から遅滞なく ⑴債権申出の公告及び知れたる債権者に対する催告 499条 催告書
官報公告
⑵所轄税務署長等への届出   異動届出書
事業開始等申告書等
⑶財産目録等の作成 492条1項 財産目録
貸借対照表
  株主総会の開催(財務目録等の承認) 492条3項 株主総会議事録
  裁判所に対する債務弁済許可申請 500条2項 債務弁済許可申請書
全部事項証明書
許可対象債務の疎明資料(契約書、請求書等)
解散の日の翌日から2ヶ月以内 解散の日に終了する事業年度の確定申告 法人税法74条 確定申告書
債権申出の公告及び知れたる債権者に対する催告から2カ月以上 公告期間・催告期間の満了    
  現務の結了、財産の換価処分、債権の取立て、債務の弁済 481条  
  清算事務年度(第1期)の終了    
  貸借対照表等の作成 494条 貸借対照表
事務報告
附属明細書
事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内 清算事業年度(第1期)の確定申告 法人税法74条 確定申告書
  貸借対照表等の監査 495条 監査報告
定時株主総会の開催日の1週間前 貸借対照表等の備置 496条1項  
  定時株主総会の開催(貸借対照表の承認、事務報告内容の報告) 497条 株主総会議事録
  残余財産の確定    
残余財産の確定した日の翌日から1ヶ月以内かつ、残余財産の分配の前日まで 最終事業年度の確定申告手続 法人税法74条  
  残余財産の分配 481条  
  清算事務の終了    
清算事務の終了から遅滞なく 決算報告の作成 507条1項 決算報告
  株主総会の開催(決算報告の承認) 507条 株主総会議事録
株主総会の開催から2週間以内 清算結了の登記 929条1号 登記申請書
清算結了の登記から遅滞なく 清算結了届出書提出   異動届出書
  帳簿資料の保存者選任 508条 帳簿資料保存者選任申立書
3 清算事務の処理

清算人は、上記のとおり、細かく期限が定められたスケジュールを遵守しながら、以下のような事務に取り組まなければなりません。

⑴現務の結了

取引先との継続的な契約関係や従業員との雇用関係を終了させるなど、会社の業務の後始末をつける必要があります。

会社の解散に伴い従業員を解雇する場合の有効性について、裁判例(東京高判平成26年6月12日、原審・静岡地判沼津支部平成25年9月25日)は、会社が解散した場合、会社を清算する必要があり、もはやその従業員の雇用を継続する基盤が存在しなくなるから、その従業員を解雇する必要性が認められ、会社解散に伴う解雇は、客観的に合理的な理由を有するものとして原則として有効であるが、会社が従業員を解雇するにあたっての手続的配慮を著しく欠き、会社が解散したことや解散に至る経緯等を考慮してもなお解雇することが著しく不合理であり、社会通念上相当として是認できないときには、解雇権の濫用として無効になる旨、判示しています。裁判例では、解雇は有効であると判断されましたが、仮に解雇が無効となる場合には、従業員に対して清算結了までの期間の賃金を支払わなければならないと考えられます。

解雇するにあたっての手続的配慮として、解散・解雇の事前予告や、再就職先の確保への尽力などが求められます。従業員一人ひとりに向き合い、十分に納得をしてもらうことが重要です。

⑵財産の処分

土地・建物、建物付属設備、車輛運搬具、機械装置、工具器具備品など、会社に残っている財産を換価する必要があります。任意売却による換価が一般的です。

⑶債権の取立て

たとえば、取引先に対して売掛金が残っている場合、それらを回収して現金化することになります。回収見込みのある債権を整理したり、支払が遅れている取引先との間で取立て交渉を行ったりする必要があります。中には、取引先が倒産して破産手続に入っていて、破産債権者として配当を受けなければならない場合もあります。

また、弁済期未到来の債権については、履行期の到来を待つか、債権譲渡の方法により換価することが考えられます。

⑷債務の弁済

会社は、債権者に対して一定の期間内(2ヶ月以上)にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、知れている債権者には各別にこれを催告しなければなりません。この期間内は、原則として債務の弁済をすることはできません。

知れている債権者以外の債権者で、期間内に債権の申出をしなかった者は、清算から除斥され、いまだ分配がされていない残余財産に対してのみ弁済を請求することができます。

⑸残余財産の分配

債務の弁済が完了した後、株主に対して、その保有する株式数に応じて、公平な残余財産の分配を行います。

当事務所では、解散・清算スケジュールの作成・進行管理、株主総会の準備・運営のほか、各種清算事務の処理、従業員の解雇に関する対応など、会社の解散・清算に必要な業務全般に対応しています。

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