株主代表訴訟

1.株主代表訴訟とは

取締役等の役員が、会社に対し、任務懈怠責任(会社法423条1項)等を負う場合、責任追及は、会社自身で(会社側の役員が)行うのが原則です。

しかし、会社側の役員(監査役、監査等委員、監査委員を含む)と責任を負う役員との間に、同僚意識や上下関係があると、“役員同士の庇い合い”や“上司への配慮”が生じ、会社による積極的な責任追及が期待できない可能性があり、結果的に、会社ひいては株主の利益が害される恐れがあります。

そこで、会社法では、個々の株主が、会社に代わって、役員の責任を追及する制度が設けられています。これを「株主による責任追及等の訴え」(会社法847条)といい、一般的には“株主代表訴訟”と呼ばれています。

2.株主代表訴訟のルール

(1)6か月の保有期間(公開会社のみ)

公開会社では、提訴の6か月前から株式を持っている株主だけが、株主代表訴訟を提起する資格を持っています(会社法847条1項)。

これは、業務妨害の目的で株式を取得し代表訴訟を提起するような行為を防ぐためですが、非公開会社では、株式の譲渡承認をするときに、このような株主は排除できると考えられるため、6か月の保有期間は必要とされていません(同条2項)。

(2)会社に対する提訴請求

株主は、株主代表訴訟を提起する前に、会社に検討の機会を与えるため、会社の代表者(取締役又は執行役の責任追及では、監査役、監査等委員又は監査委員)に対し、役員の責任を追及する訴えを起こすよう請求する必要があります(会社法847条1項および3項)。

会社の代表者は、提訴請求を受けた場合、まず調査を行い、責任追及の必要があると判断すれば、責任追及の訴えを提起しますが、提訴しないという判断をしたときは、60日以内に不提訴の理由を通知しなければなりません(同条4項)。株主としては、この内容を確認し、株主代表訴訟を起こすかどうか、検討することになります。

そして、提訴請求から60日以内に会社が訴えを提起しない場合、株主は、株主代表訴訟を提起できるようになります(会社法847条3項)。なお、緊急性の高い事案では、この提訴請求の手続をスキップして提訴できます(同条5項)。

(3)会社に対する訴訟費用の請求権

株主代表訴訟で、株主が“勝訴”(全額認容だけでなく、一部認容や和解により役員が金銭を支払った場合も含む)した場合、当該株主は、会社に対して、訴訟のためにかかった費用や弁護士費用を支払うよう請求することができます(会社法852条1項)。

(4)株主代表訴訟で追及できる責任

株主代表訴訟では、任務懈怠責任だけではなく、取締役が会社に負っている取引上の債務も追及することができます(最判平成21年3月10日民集63巻3号361頁)。

例えば、会社が役員に金銭を貸し付けたにもかかわらず、弁済期を過ぎても会社が返済を求めようとしない場合、株主は、会社に代わり、当該役員に対し、貸付金の弁済を求める訴訟(株主代表訴訟)を提起できます。

(5)株主代表訴訟のリスク

株主が“敗訴”(訴訟を取り下げた場合を含む)した場合でも、会社に損害が出ることを知りながら提訴したような例外的な場合を除いて、株主は、会社の損害について賠償する責任を負いません(会社法852条2項)。

(6)印紙代

金銭的な負担が、株主による代表訴訟提起の妨げとならないように、株主代表訴訟の提起のための手数料(印紙代)は、一律13,000円とされています。

3.株主代表訴訟とは

株主代表訴訟は、以下のような流れで進行することになります。

株主代表訴訟の流れ

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