取締役解任
- 取締役解任の方法には以下の2通りの方法があります。
- (1)株主総会において取締役の解任を決議する。
- 解任を求める株主が合計して過半数の株式を保有している場合には、(定款において決議要件が法定の過半数より加重されている場合、累積投票で選任された取締役が対象である場合、種類株式が発行されている場合を除き、)株主総会の普通決議により、取締役の解任議案を決議することができます。この場合に事前に検討すべき事項としては、解任について「正当な理由」が認められるか否かです。解任後に元取締役から不当解任を理由とする損害賠償請求訴訟が提起される可能性があるためです。この点については、コラム『正当な理由なく解任された取締役の会社に対する損害賠償請求』をご参照ください。
- (2)裁判所に取締役解任の訴えを提起する。
- 解任を求める株主の議決権が合計しても過半数に足りない場合には、続いて取締役解任の訴えを検討することになります。解任の訴えを提起するか否かの判断に当たっては、以下の①~③の要件をクリアできるかどうかを検討する必要があります。
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① 総株主(解任議案について議決権を行使できない株主及び解任対象の役員である株主を除く。)の議決権の3%以上の議決権の保有又は発行済株式(自己株及び解任対象の役員が保有している株式を除く。)の3%以上の数の株式の保有(なお、公開会社においては、訴えの提起の日から起算して6か月前から株式を保有している必要があります。)
② 取締役の職務執行に関する「不正行為」や「法令・定款に違反する重大な事実」の証明
「不正行為」の典型例としては、会社財産の使い込みがあり、取締役が会社財産と自己の財産を混同していたケースで、「不正行為」が認定されています。「法令・定款違反の重大な事実」の具体例としては、株主総会の招集を取締役が何年にもわたって怠っている場合が挙げられます。③ 株主総会において取締役解任議案が「否決」されたこと
「否決」には、株主総会の招集が行われたが、定足数に足りず流会となった場合も含まれます。単に否決見込みであるだけでは「否決」されたものとは認められません。 - 取締役解任の訴えにおいて勝訴し、判決が確定した場合、会社の行為を待つことなく当然に解任の効果が生じ、職権で登記手続が為され、「解任」された旨が登記簿上に記載されます。
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ただ、ここで問題となるのは、解任判決によって一度解任された者でも、その後の株主総会において改めて取締役に再任されることが出来るということです。
そのため、解任された取締役とその協力株主が合計して過半数の株式を保有している会社では、解任判決を得ても、経営権を奪取するまでには至らず、目的を達成できない場合が存在します。
しかし、裁判所の判決を受けて、真実が明らかになり、誰を取締役とすべきか意向を変える株主がおり、当該株主の意向次第で経営権の奪取に至ることが予想される場合には、裁判所において真実を明らかにすることに価値があり、「解任の訴え」を選択することにメリットがあると実務上感じております。 - この点、会社法起草者の「解任の訴えで解任されたからといって,それによって取締役の欠格事由になるわけではありません。したがって,ゴリ江もん(注:解任を求める株主)が,株主総会で過半数をとれないと,結局,解任の訴えで勝っても何の意味もないのです。」、「会社法では,ごり江もんが,最初に50%超の議決権を持っていると,解任議案が可決されてしまいますので,『解任の訴え』の出る幕がないんです。」、「結局,取締役の選任決議のときに別の人を選べないような場合に,解任の訴えを認めても,あまり実益はない」とのブログ上の見解( http://blog.livedoor.jp/masami_hadama/archives/50487220.html )は、真実が明らかになればその後の投票行動を変えると期待できる株主が存在するケースもあることや、誰でも閲覧可能である登記簿上に「解任」の記録が残ることによる相手方へのインパクト等を考慮して解任の訴えを選択するケースもある実務上の感覚からすると、「解任の訴え」の有用性に誤解を招きかねない見解であると思います。