資本政策

資本政策(エクイティストーリー)とは、事業計画上、どのタイミングで、どのくらいの資金需要が発生し、それをどのような方法で調達していくかというストーリーのことです。

①事業計画に基づく資金需要、②企業価値の推移、③経営陣の持株比率(シェア)を考え、バランスのとれた資本政策を策定することは成長企業にとって極めて重要です。

資金需要を充たせなければ成長が止まってしまいますが、経営陣の持株比率(シェア)の低下に気を付けなければ、会社の支配権を失ってしまうことになります。シェアの低下を抑えるためには高い企業価値を前提とすることが効果的ですが、不相応に高い企業価値(株価)でファイナンスをしてしまうと、次の勝負どころのラウンドに支障が生じることがあります。

また、誰から資金調達をするか(株主構成)も重要です。意見が衝突したり、敵対的な要求をしたりする可能性のある相手から資金調達すべきでないことはもちろんですが、単なる資金提供以上の価値を会社に提供してくれる相手がベストです。

持株比率と権限

資本政策を考える上では、持株比率とそれに応じた権利・権限を把握しておくことが重要です。以下の表は、持株比率と権利・権限の対応表です(機関設計等による例外もありますので目安としてお考えください。)。

持株比率(シェア)権利・権限
3分の2以上 特別決議を成立させることができる。
・合併・会社分割・株式交換・株式移転
・事業譲渡
・定款変
・株式の発行
・ストックオプションの発行
・監査役の解任
・役員の損害賠償責任の一部免除
・解散
過半数 普通決議を成立させることができる。
・取締役・監査役の選任
・取締役の解任
・役員報酬の決定
・剰余金の配当
・競業取引・利益相反取引の承認
2分の1 普通決議を阻止できる。
3分の1超 特別決議を阻止できる
25%以上 いわゆる相互保有株式のルールが適用される。
(A社がB社の株式の25%以上を保有している場合、B社はA社の株式を保有していても当該株式について議決権を行使できない。)
20%以上 上場企業に20%以上保有されると持ち分法が適用され連結決算の対象となり、ディスクロージャーに対応する必要が生じる。
10%以上 会社解散請求権
3%以上 株主総会招集請求権
役員解任請求権
業務財産検査役選任請求権
会計帳簿閲覧請求権
1%以上 総会検査役選任請求権

よくある資本政策の失敗例

実際の経営に関与しないコーファウンダー(共同創業者)やエンジェルに大きなシェアが与えられているケースがあります。会社設立の際に相談に乗ってもらい、設立時に同じ株価で出資してもらった結果、大きなシェアになっているというケースをよく見かけます。このようなケースでは、後々、会社経営や資金調達に制約が生じることがあります。

また、途中で辞めた共同創業者が株式を持ったままで、会社に残った創業者の努力にフリーライドできる状態になってしまうと、会社に残った創業者のモチベーションに悪影響が生じます。このような失敗を防ぐためには、予め株主間契約を締結し、株式の買い取りについて取り決めておくことが効果的です。

また、創業間もない段階で、株価を簿価純資産法で計算した上で、相当額のファイナンスを受けてしまい、それによって経営陣がシェアを大幅に低下させてしまうケースもよくあります。資金調達をする際は、前提となる企業価値(株価)の計算について注意する必要があります。

投資家の選び方

投資家を選ぶ場合には、同じ船に乗ってくれるか(ファンド期限はいつまでか)、どのような価値を提供してくれるか(成長に力を貸してくれるか)、継続して資金調達ラウンドに付き合ってくれるか(ファンド規模はどうか、次のラウンドの考え方)、社員のモチベーションについてどのように考えているか(ストックオプションについての考え方)、利益相反的な要素がないか(トラブルの回避)など、総合的な観点から選ぶことが重要です。

失敗した資本政策のリカバー

資本政策の失敗を取り戻すのは非常に困難です。既存株主の協力の下、ストックオプションの発行、種類株の発行、MBOの実行によって幸運にも失敗を取り返すことができるケースもありますが例外的です。当初から慎重に資本政策を検討して頂くことが重要です。

実績

資本政策・ファイナンスの分野に関して、大規模なM&Aファイナンス、上場企業のストックオプションのストラクチャリング、ベンチャー企業の資本政策、新株予約権付社債(CB)の設計、日経新聞に掲載されたベンチャー企業のファイナンス案件の実績など、豊富な実績があります。ぜひお気軽にご相談ください。

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