株式紛争

株式・経営支配権に関する紛争の特徴は、関係者が多く、現在進行形で紛争が生じる中で、裁判所又は裁判外で、適切な打ち手を適時に打って迅速に対応する必要があるところにあります。複数の手続を同時並行で進めるべき場面もあり、専門性の高い分野となっております。当事務所では、上場企業の経営権紛争についても実績があり、株主提案、委任状争奪戦、株主権の帰属(名義株)の争い、決議取消し、新株発行の差止め、違法行為の差止め、役員の解任紛争、善管注意義務違反に基づく損害賠償責任の追及などといった紛争類型を得意としております。初期の対応がその後の展開に大きく影響することがありますので、初期段階から早めにご相談いただければと思います。

相続と株式

社長亡き後、社長が所有していた株式をめぐって親族間で相続争いが発生し、経営権をめぐる紛争に発展してしまうことがあります。このような紛争は、事前に後継者に対して①生前贈与、②有償譲渡、③遺言の方法により、株式が移転するようにしておくことで予防できます。①生前贈与又は②有償譲渡の方法により生前に株式を後継者に移転する場合、その後の後継者との関係悪化により早期退陣に追い込まれてしまうこともあるため、実務上は③遺言の方法によることが多いのが実状です。

予防策をとっていない状況で相続が発生した場合、社長が所有していた株式は、相続財産として相続人の準共有の状態となり、遺産分割協議により承継者を決定することになります。ところが、他の相続財産との兼ね合いもあり、必ずしも速やかに決定できるとは限りません。遺産分割協議がまとまらない間は、共同相続人の名義に書き換えた上で、共同相続人の中から株主の権利を行使すべき者1名を定め、会社に届出しなければなりません(会社法第106条)。この権利行使者を選ぶ方法は、共同相続財産の管理行為に当たると考えられており、各相続人の法定相続分の割合に従い、その過半数によって決定されることになります(民法第252条、平成9年1月28日最高裁判決)。過半数によって定められた権利行使者は、単独名義で株主権を行使することができます。そのため、権利行使者の選定に当たり多数派の相続人らが新しく経営陣を選出し、少数派を締め出すことが可能となっています。誰も過半数を得ることができず、権利行使者が定まらない場合には、各相続人はその共有株式について議決権を行使することができません。この場合、共有状態の株式以外の株式だけで株主総会決議を行うことになります。

譲渡制限株式の処分・買取請求

譲渡制限株式を譲渡するには、会社の承認を受ける必要があります。会社が承認しない場合、株主は、会社に対し、会社が買取るか、または、別の買取人を指定してその者に買い取らせるよう請求することができます。これによって、株主は、譲渡制限株式を処分して対価を受けることができます。買取金額は、株主と会社(または指定買取人)の間の協議によって決めることになりますが、協議で決まらない場合には、裁判所に対して売買価格の決定の申立てを行い、裁判で決めることになります。

反対株主の株式買取請求

定款変更、事業譲渡、合併、会社分割、株式交換等について反対する株主は、会社に対して事前に反対の通知を行い、株主総会において実際に反対する等の一定の要件を満たした場合には、会社に対して株式の買取請求を行うことができます。買取金額は、株主と会社の間の協議によって決めることになりますが、協議で決まらない場合には、裁判所に対して売買価格の決定の申立てを行い、裁判で決めることになります。

相続人等に対する株式の売渡請求

定款に定めがある場合、会社は、相続があったことを知った日から1年の間、譲渡制限株式の相続人に対して、株式を売り渡すよう請求することができます。相続の発生後に、定款にその旨の定めを置き、売渡請求をすることも可能です。買取金額は、株主と会社の間の協議によって決めることになりますが、協議で決まらない場合には、裁判所に対して売買価格の決定の申立てを行い、裁判で決めることになります。

株主総会招集請求

役員の選解任、剰余金の配当など、株主総会が決定権限を有する事項(及びその他の重要事項)について、取締役が株主総会を招集しようとしない場合には、一定の株主も裁判所の許可を得て株主総会を招集することができます。

「一定の株主」とは、公開会社の場合には、総株主の議決権の3%(これを下回る割合を定款で定めた場合にはその割合)以上の議決権を、6ヶ月(これを下回る期間を定款で定めた場合にはその期間)前から引続き保有する株主がこれに該当します。なお、非公開会社の場合には、継続保有の要件がありません。また、特例有限会社の場合は、原則として総株主の議決権の10%を保有する株主であることが必要とされていますが、定款でこの要件を加重することもでき、請求権自体を排除することもできます。

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